こんにちは。高知の街で暖簾を掲げて70年、近森謄写堂(ちかもりとうしゃどう)の3代目・近森純一郎です。
さて、今日は少しだけ「印刷の舞台裏」のお話をさせてください。
最近はパソコンが普及して、WordやExcel、PowerPointを使って、ご自身でチラシや資料のデータを作られる方が本当に増えました。さらに最近では、デザインツールの「Canva(キャンバ)」を使って、プロ顔負けの素敵なデザインを作って持ち込まれる方もたくさんいらっしゃいます。「自分でここまで作ったんだけど、これを綺麗に印刷してほしい」というご相談をたくさんいただいています。
でも、そこでよく起きるのが「画面で見ていたのと、なんか違う……」というトラブルです。せっかく時間をかけて作ったデータが、印刷機を通す直前で形が崩れてしまう。そんな悲劇をなくすために、私たちが大切にしている「データ入稿」のポイントをお伝えします。
「バージョン」が違うと、魔法が解けてしまう?
まず最初にお伝えしたいのが、ソフトの「バージョン」のお話です。
皆さんがお使いのWordやExcelには、実はたくさんの種類があります。「Office 2021」だったり「Microsoft 365」だったり。そして、私たち印刷会社が持っているソフトにも、それぞれのバージョンが存在します。
実は、これがなかなかのくせものなんです。
「最新のWordで作ったから大丈夫」と思っていても、受け取る側のパソコンが少し古いバージョンだったり、あるいはその逆だったりするだけで、文章の区切りが変わったり、全体のレイアウトが微妙に動いたりすることがあります。これは、ソフトの進化に合わせて「データの読み解き方」が少しずつ変わってしまうから起こる現象です。
私たちもプロとして最新の環境を整えてはいますが、それでも100%同じに見えるとは限りません。
「じゃあ、どうすればいいの?」と思いますよね。一番の解決策は、データを保存する時に「PDF形式」に書き出してから送っていただくことです。PDFはいわば「データの写真」のようなもの。これなら、どのパソコンで見ても形が崩れる心配がぐっと減ります。もし、「PDFの作り方がわからない」という時は、遠慮なく私たちに聞いてください。
Canvaの普及と、印刷用データの「一工夫」
最近、本当によく目にするようになったのが「Canva」で作られたデータです。
直感的に操作できて、おしゃれなテンプレートも豊富。個人クリエイターの方だけでなく、企業の広報担当者さんも活用されていますよね。私たちも、こうした新しいツールの普及は「表現が身近になる」という意味で、とても素敵なことだと感じています。
ただ、Canvaでデータを作る際にも、印刷会社へ渡すときには少しだけコツがいります。
例えば、画面上では綺麗に見えていても、印刷すると文字が切れてしまったり、色が思っていたより沈んで見えたりすることがあります。これは「画面の色(RGB)」と「印刷のインクの色(CMYK)」の仕組みが違うためです。
Canvaから書き出す際は、「PDF(印刷用)」という設定を選んでいただくのがベストですが、もし設定に迷ったら、まずはそのまま見せてください。「このデザインを一番綺麗に印刷するにはどうすればいい?」という相談に乗るのが、私たちの仕事です。新しいツールを使いこなす皆さんの感性を、印刷のプロとしての技術でしっかり支えたいと考えています。
なぜか文字が重なる……「段ズレ」の正体
次に多いのが、文字のズレや段落の崩れです。
「自分の画面ではぴったり一行に収まっていたのに、印刷会社のモニターで見ると最後の一文字がはみ出している」
「箇条書きの点(・)が、なぜか変な場所に浮いている」
こんな経験はありませんか?
これには「フォント(書体)」の種類や、プリンターの設定の違いが関係しています。特にWordなどのOfficeソフトは、もともと「家庭用や事務用のプリンターで印刷すること」を前提に作られています。そのため、印刷会社の高精細な機械で読み込もうとすると、細かな計算のズレが生じて、文字が重なったり隙間が空いたりすることがあるんです。
これは、皆さんの作り方が悪いわけではありません。道具の特性上、どうしても起こってしまう「現象」のようなものなんです。
私たちは、こうしたズレがないか、作業前に必ずチェックを行っています。もしズレが見つかった時は、「ここ、少しズレてますよ」と正直にお伝えします。それは、皆さんが時間をかけて、一生懸命に言葉を選んで作った大切なデータだからです。最高の状態で紙に乗せてあげたい。それが私たちの「グラフィックサービス」としてのプライドでもあります。
「再入稿」のお願いと、プロによる修正の安心感
実際に印刷に入る前、私たちは「校正」という作業をお願いしています。「これで間違いありませんか?」と確認していただく工程です。ここで「あ、一箇所だけ文字を修正したい」ということがよくあります。
この時、私たちの方で「じゃあ、こちらでチャチャッと直しておきますね」と言いたいところなのですが、実は「修正した最新のデータをもう一度送っていただく(再入稿)」ことが、一番確実で安全な方法なんです。
一度こちらの手元でデータをいじってしまうと、前述したような「設定の差」によって、修正した場所以外に予期せぬズレが発生するリスクがあるからです。
「何度も送るの、悪いなぁ」なんて思わないでください。そのひと手間が、結果として間違いのない、美しい仕上がりへの一番の近道になります。
ただ、どうしても操作が分からなかったり、何度やっても文字が上手く収まらなかったりすることもありますよね。そんな時は、遠慮なく仰ってください。「どうしてもできないこと」は、近森謄写堂で綺麗に修正いたします。
「ここをこう直したいけれど、自分のパソコンじゃ限界がある」
そんな時は、私たちの出番です。プロの専用ソフトを使い、全体のバランスを見ながら、一文字単位で美しく整えます。お客様の「困った」を解決してこその、近森謄写堂ですから。