「これ、どう直せばいい?」と迷ったら。印刷の仕上がりを左右する「校正」のやさしい教科書

高知の街路樹の緑が、目に眩しい季節になりましたね。
こんにちは、近森謄写堂3代目の近森純一郎です。

私たち近森謄写堂は、ここ高知の地で70年、皆さまに支えられて歩んできました。創業当時はガリ版印刷から始まりましたが、時代は変わり、今ではデジタルの力も借りながら、パンフレットやチラシ、そしてWebなど、形を変えて「想いを届ける」お手伝いをしています。

でも、時代がどれほど変わっても、私たちの仕事の根っこにあるものは変わりません。それは、単にインクを紙に載せる「印刷会社」である以上に、お客様の「困った」を解決し、最高の形で表現する「グラフィックサービス業」でありたいという想いです。

さて、今日お話ししたいのは、印刷物を作る過程で避けては通れない、でも少しだけ「難しそう」と思われがちな「校正(こうせい)」についてです。

「校正って、結局何をすればいいの?」
「赤ペンでどう書けば、プロに伝わるんだろう?」

そんな疑問をお持ちの広報担当者さんや、初めて自分の冊子を作ろうとしているクリエイターの方に向けて、3代目の視点から、分かりやすくお伝えしようと思います。

1. そもそも、印刷用語の「校正」ってどんな役割?

まずは言葉の整理から始めましょう。印刷の世界で「校正」とは、「印刷する前に、文字の誤りやデザインのミスをチェックし、修正すること」を指します。

もっと分かりやすく言うなら、「本番前の最終確認」ですね。

私たちが作成したデザイン案(これを「ゲラ」と呼んだりします)をお客様にお渡しし、内容に間違いがないかを確認していただく。このキャッチボールが「校正」です。

「プロに任せているんだから、プロがチェックしてくれるんじゃないの?」
そう思われるかもしれません。もちろん、私たちもプロとして細心の注意を払います。しかし、お客様のお名前の漢字、思い入れのあるキャッチコピーのニュアンス、イベントの開催日時……これらを最も正しく知っているのは、実は作成を依頼された「お客様ご自身」なのです

校正は、間違いを探す作業であると同時に、「届けたい相手に、正しい情報を、最高の状態で届けるための磨き上げ」の時間でもあります。だからこそ、私たちはこの工程をとても大切にしています。

2. 「赤入れ」のコツ:プロに伝わるスムーズな修正の出し方

校正作業で、修正箇所を書き込むことを「赤入れ」と言います。なぜ赤色なのか。それは、黒い文字の上に重なってもパッと見て一目で修正だと分かるからです。

時々、「遠慮して鉛筆で薄く書いてくださる方」や「丁寧すぎて修正箇所がどこか分かりにくい方」がいらっしゃいますが、実は「大胆に、ハッキリと」書いていただくのが一番助かります。

ここで、初めての方でも失敗しない「赤入れ」の基本をいくつかご紹介します。

  1. 「何」を「どう」したいかを明確にする
    例えば、「文字を大きく」とだけ書くよりも、「タイトルを目立たせたいので、一回り大きくしてほしい」と理由を添えていただけると、デザイナーは「あ、それならフォント自体を太くしたほうがいいかな?」といったプラスアルファの提案がしやすくなります。
  2. 引出線を活用する
    修正したい文字に丸をつけ、そこから余白に向かって線を引いて、具体的な指示を書きます。文章の途中に無理やり書き込むと、見落としの原因になってしまいます。
  3. 「トル」と「イキ」
    不要な文字を消したいときは「トル」。一度修正を指示したけれど、やっぱり元に戻したいときは、二重線で消した文字の横に「イキ」や「生かす」と書きます。

難しく考える必要はありません。大切なのは、私たちに「どうなってほしいか」の意図が伝わることです。もし書き方に迷ったら、余白に「ここ、もうちょっと元気な感じにしたいんだけど、どうすればいいかな?」とメモを添えてください。それこそが、私たちの出番です。

3. ここだけは見てほしい!校正で見落としがちな3つの注意点

長年、多くの印刷物に関わっていると、「ここが間違っていると大変だ!」という共通のポイントが見えてきます。校正の際は、ぜひ以下の3点に神経を集中させてみてください。

  1. 「数字」と「曜日」の不一致
    これが一番多いミスです。「5月10日(月)」とあっても、カレンダーを見たら火曜日だった……ということがよくあります。日付、時間、電話番号、金額。数字は情報の命です。必ず指差し確認でチェックしましょう。
  2. お名前や会社名の「漢字」
    特に「崎」と「﨑」、「辺」と「邊」など、旧字体の間違いは非常に失礼にあたります。名刺や名簿と照らし合わせて、一字一字確認が必要です。
  3. 「自分を疑う」勇気を持つ
    自分で書いた文章は、脳が勝手に補正して読んでしまうものです。「正しいはずだ」と思い込んでいると、簡単な誤字脱字すら見逃してしまいます。

おすすめのテクニックは、「声に出して読んでみる」こと。声に出すと、リズムがおかしい場所や、接続詞の重複に気づきやすくなります。また、可能であれば自分以外の人に一度見てもらう「ダブルチェック」も非常に有効です。

4. 迷ったときは「表現の相談所」を頼ってください

校正の作業を進めていると、「修正指示を出したけれど、逆にバランスが悪くならないかな?」とか「この色味、印刷したらどう見えるんだろう?」といった不安が出てくることもあるでしょう。

そんなときこそ、近森謄写堂という存在を思い出してください。

私たちは、ただ言われた通りに直すだけの「作業所」ではありません。お客様が「もっとこうしたい」と悩んでいるとき、共に悩み、最適な答えを探す「表現の相談所」でありたいと考えています。

「文字を詰めすぎて読みづらくなっていないか?」
「この紙の質感なら、もう少し文字は太いほうがいいかもしれない」
「高知の人の好みを考えると、こっちの色味の方が反応がいいかも」

70年の経験と、新しい感性を掛け合わせて、私たちはあなたの「表現」に並走します。校正は、一人で黙々とこなす苦しい作業ではなく、私たちと一緒に、最高の一枚を創り上げるクリエイティブなプロセスです。

印刷物は、一度刷ってしまうと後戻りができません。だからこそ、校正には少しの緊張感が伴います。でも、その緊張感の先にある「完成品を手にした時の喜び」は、何物にも代えがたいものです。

もし、何かを作りたいけれど「校正なんてできるかな?」「準備が大変そうだな」と足踏みされているなら、まずはそのお悩みを聞かせてください。

近森謄写堂は、今日も高知のどこかで、皆さまの「伝えたい」という想いを形にしています。
「一度、相談してみようかな」
その一言が、私たちの最高のやりがいです。

いつでも、お待ちしております。