「とりあえずネットで頼めば安くて早いし、それでいいかな」

そんな風に思われることが、最近は当たり前になってきました。こんにちは、近森謄写堂の3代目、近森純一郎です。

高知の街で、祖父の代から数えて70年。私たちは「印刷」という仕事を通じて、多くの方々の想いを形にしてきました。時代は流れ、今や指先一つで名刺もチラシも何でも注文できる便利な世の中です。正直に申し上げれば、私自身も「これは便利だな」とネットサービスに関心を受けることがあります。

しかし、仕事として印刷に向き合っていると、ふと立ち止まって考えてしまうのです。「安さや速さだけでこぼれ落ちてしまうものはないだろうか」と。

今回は、最近よくお客様からも聞かれる「街の印刷会社とネット印刷、結局どっちがいいの?」というテーマについて、老舗の3代目としての本音をお話ししてみたいと思います。

ネット印刷は「完成図が見えている時」の強い味方

まず最初にお伝えしておきたいのは、私はネット印刷を否定するつもりは全くないということです。むしろ、あのシステムと効率の良さは、一つの完成された「表現の形」だと思っています。

ネット印刷の最大のメリットは、何と言っても「価格」と「手軽さ」です。決まったフォーマットがあり、自分でデータを作ることができて、納期に余裕がある。そんな時、ネット印刷は非常に強力なツールになります。

ただし、ネット印刷はあくまで「自動販売機」のようなものだと思っています。お金を入れ、データを入れれば、決まったものが出てくる。そこには「この色、もう少し温かみが欲しいんだけど」「この紙だと、配った時に手が切れたりしないかな」といった、細かな対話は存在しません。

データに不備があれば、そのまま印刷されて届くか、あるいは「エラーです」という無機質なメールが届くだけ。自己責任の重さと引き換えに、低価格を手に入れる。ドライですが、ここがネット印刷の本質だと私は考えています。

紙一枚に宿る「手触り」と、画面では伝わらない色の正体

一方で、私たちのような街の印刷会社が得意とするのは、その「対話」の部分です。

例えば、名刺一枚を例にとってみましょう。画面上で見る「白」と、実際の紙の「白」は驚くほど違います。少し黄色みがかった温かい白、雪のように眩しい白、和紙のようなざらりとした質感のある白。その人の仕事内容や人柄によって、選ぶべき白は変わってくるはずです。

私たちは、お客様の隣に座り、実際に紙の見本帳を広げて「こっちの紙の方が、あなたの誠実さが伝わりませんか?」と一緒に悩みます。これは、効率化を最優先するネット印刷には絶対にできないことです。

「届いてみたら思っていた色と違った」という失敗がない安心感。それは、単なる印刷代金以上の価値があると私たちは自負しています。

私たちが目指すのは、印刷機を回すことではなく、あなたの「困った」を解くこと

近森謄写堂は、単なる「印刷会社」でありたいとは思っていません。私たちが掲げているのは「グラフィックサービス業」という言葉です。もっと噛み砕いて言えば、皆さんの「表現の相談所」でありたい。

「チラシを作りたい」というお客様がいたとき、私たちは「はい、何枚刷りますか?」と聞く前に、「どうしてチラシを作りたいのですか?」と問いかけます。

よくよくお話を伺ってみると、実はチラシを配るよりも、SNSを活用した方が効果的だったり、看板のデザインを見直した方が解決に繋がったりすることもあります。「印刷屋なのに、印刷しないことを勧めるの?」と驚かれることもありますが、それでいいんです。

お客様の目的は「印刷すること」ではなく、「集客すること」や「想いを伝えること」のはず。その目的を達成するために、紙という手段にこだわらず、最適なルートを一緒に考える。それが3代目である私が大切にしている「新しい老舗」の形です。

70年の歴史で培った「紙」への深い知識と、今の時代に求められる「デジタル」や「デザイン」の感性。その両方を掛け合わせて、お客様の「困りごと」を解決するパートナーでありたいのです。

使い分けのコツは「誰に届けたいか」という物語にある

では、結局のところ、どう使い分ければいいのでしょうか。私からの提案は、とてもシンプルです。

もし、あなたが「事務的に処理したい、中身が決まっている仕事」を抱えているなら、ネット印刷を賢く利用するのも一つの手です。無理に私たちが全てを引き受けることが正解だとは思いません。

でも、もしあなたが「ここぞという勝負所」に立っていたり、「誰に相談していいか分からない悩み」を抱えていたりするなら、ぜひ私たち印刷会社に相談してください。

  • 新しく事業を始めるので、ロゴから名刺まで一貫したイメージを作りたい。
  • 地元の特産品を、県外の人にも手に取ってもらえるようなパッケージにしたい。
  • 周年行事の記念誌を作りたいけれど、資料がバラバラでどうまとめていいか分からない。

こうした「物語」が必要な場面こそ、私たちの出番です。
「予算がこれしかないんだけど、何ができるかな?」といった、等身大のご相談も大歓迎です。私たちは、機械的な見積もりを出すだけでなく、その予算内で最大限に想いが伝わる方法を、泥臭く一緒に考えます。