印刷物のサイズ(規格)が決まっている理由

こんにちは。近森謄写堂の近森純一郎です。

高知の街角で70年、祖父の代から続くこの印刷会社で、私は三代目のバトンを受け取りました。日々、名刺からチラシ、地域の広報誌まで、さまざまなお手伝いをさせていただいています。

打ち合わせの中で、時折お客様からこんな質問をいただくことがあります。
「どうして印刷物のサイズって、A4とかB5とか決まったものばかりなんですか?」
「もっと自由な大きさで作ってもいいはずですよね?」

確かにその通りです。表現の世界は自由であるべきですし、お手元の紙がどんな形をしていても、本来は間違いではありません。それなのになぜ、世の中の印刷物は判で押したように規格サイズに収まっているのか。今日はその理由と、老舗印刷会社が考える「サイズ選びの本当の価値」についてお話ししてみたいと思います。

「1:1.414」に隠された、先人の知恵と効率の美学

まず、A4やB5といった規格が決まっている最大の理由は、ズバリ「無駄をなくすため」です。

印刷用の大きな紙を半分に切る、またその半分に切る……。この作業を繰り返したときに、常に縦と横の比率が変わらず、かつ紙の端切れ(ゴミ)が一切出ない魔法の比率があります。それが約1:1.414の「白銀比」と呼ばれるものです。

もし、みんながバラバラのサイズで注文をしたら、印刷するたびに大量の紙の端切れが捨てられてしまいます。それはコストとしてお客様の価格に跳ね返ってしまいますし、環境にも優しくありません。

私たちは70年前、ガリ版印刷からスタートしました。当時は今以上に紙が貴重だった時代です。先代たちが「いかに無駄なく、美しく情報を届けるか」を追求した結果、この合理的な規格サイズが私たちのスタンダードとして定着していったのです。

規格サイズは、社会をスムーズに回す「共通言語」

もう一つの理由は、印刷された「その後」の都合です。

想像してみてください。もし、届いた封筒がすべて1cmずつサイズが違っていたらどうでしょう。郵便局の仕分け機は止まってしまい、事務机の引き出しには書類が収まらず、本棚に並べたファイルはガタガタになってしまいます。

つまり、規格サイズというのは、単なる紙の大きさではなく、社会全体で共有している「インフラ」のようなもの。クリアファイルも、封筒も、スキャナーも、すべてはこの規格に合わせて作られています。

「どこでも手に入る、どこでも使える、どこでも保管できる」

この安心感こそが、規格サイズの最大のメリットです。私たち印刷会社が「まずはA4で考えましょうか」とご提案するのは、その印刷物がお客様の手を離れた後、受け取った方がストレスなく扱えるように、という配慮でもあります。

あえて「枠」を外れることで生まれる、新しい価値

ここまで規格の利便性を語ってきましたが、ここからが「三代目」としての私の本音です。

正直に申し上げて、私は「すべてが規格通りである必要はない」と考えています。むしろ、今の時代、情報のほとんどはスマートフォンの中で完結します。そんな中で、あえて「紙」という形にするのであれば、そこに触感や驚きがあっていい。

例えば、正方形のパンフレット。
それだけで、手に取った瞬間に「おや?」という新鮮さが生まれます。
あるいは、しおりのように細長い会社案内。
カバンからスッと取り出しやすく、デスクの片隅に置いておきたくなる佇まい。

もちろん、規格外のサイズはコストが少し上がることもありますし、専用の封筒が必要になるかもしれません。でも、その「違和感」こそが、数多ある情報の中からお客様の目を引き、記憶に残り、信頼を築くきっかけになることもあるのです。

「自由なサイズで作っていいはず」というお客様の直感は、実は「もっと自分たちの個性を伝えたい」という情熱の裏返しではないでしょうか。その想いを、私たちは大切にしたいのです。

「印刷会社」の枠を超えた、表現の相談所として

私たち近森謄写堂は、自分たちの役割を単に「紙に色を載せること」だとは思っていません。お客様が抱えている「もっと知ってほしい」「ここを解決したい」という困りごとを、デザインとアイデアで解決する「グラフィックサービス業」でありたいと考えています。

規格サイズを賢く使ってコストを抑え、その分、紙の質感をグレードアップする。
あるいは、あえてサイズで遊んで、誰にも真似できないインパクトを狙う。

どちらが正解かは、お客様が「誰に、何を伝えたいか」によって変わります。だからこそ、私たちは最初のヒアリングを何より大切にしています。高知の温かい空気感の中で、膝を突き合わせてお話ししましょう。

「こんな変わった形の印刷物、できるかな?」
「予算は抑えたいけど、安っぽくしたくないな」

そんな等身大の悩みこそ、私たちの出番です。約70年の歴史で培った確かな技術と、これからの時代を見据えた柔軟な感性。その両方を使って、あなたにとっての「最適解」を一緒に見つけ出します。

紙のサイズに迷ったら、あるいは紙以外の手法(SNSや動画、看板など)も含めて表現に迷ったら、ぜひ一度、近森謄写堂へ足を運んでみてください。私たちは、あなたの想いを形にする「表現の相談所」として、いつでもここでお待ちしています。